ゴースト

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ゴースト

 次の日、ダンジョンに降りた僕らは、ゾンビの部屋の奥の扉を開けて先に進もうという計画で進んで行った。   「着いたぜ」  先頭を歩くネズミ君に言われて、ハッと我に返る。    機械的に歩いて、ゾンビの部屋の前まで来た。 「やっこさん、御在宅中ですぜ」  顔をしかめるネズミ君。僕のところまでもにおいが漂ってきている。 「買い物に行ってくれてると良かったんだけど」  鉄子は鼻をつまんだ。 「一応、靴は脱いで、急いでるフリして通り抜けよう。いいね、妙子さん」 「し、しっかり抱いてます!」 「フミャ〜ン」  一番心配な幻獣は、女子高生の豊満な胸にガッチリと抱かれた。 「お邪魔しま〜す」  そろそろと扉を開けて中に入る。わざとらしく靴を掲げて、部屋を汚す意思のないことをアピールする。  おや?中は真っ暗だな。燭台を使っていないのか?  うわぁ…。 「酷えなぁ」  と、盗賊でさえ衝撃を受ける。 ランプの光が照らし出したのは、グチャグチャに荒らされた部屋だった。  戸棚が倒れ、扉が開いて中のものがあちこち床に散乱している。    ゾンビ自慢のアイランドキッチンも、斧か何かで割られた痕があった。  その傍らには、メタクソに損傷を受けたゾンビの死体が。   「どっかのパーティが通ったあとだな。派手にやらかしたな、おい」 「このゾンビはオトモダチ・モンスターのはずだったよね。どうしてこうなったんだろう」 「敵と見ると構わずに襲いかかるパーティもいるからな」  そうなんだ。でも、それにしても酷いなぁ。  宝箱も、鍵を開けられて中身を持っていかれていた。   「しょうがない。みんな、ゾンビはかわいそうだけど先に進もう」 「んだな。ま、そのうちこいつも生き返るだろ」  奥の扉をガチャリと開ける。どうやら真っ直ぐに通路が伸びているようで、再び僕らはネズミ君を先頭にして列を作って進んだ。   「扉があるぜ。どうする?」  しばらくすると、右側に扉の付いた壁があった。ネズミ君が僕に聞いてくる。通路はまだ続いているようだが。 「ひとまず先に進もう。この通路がどこまで通じているかを確認しよう」  扉をスルーして、更に先へ。だが、すぐに行き止まりになった。 「右に扉が二枚あるら」  今度は短い間隔で、扉が二枚並んでいた。 「勇者、どうする?こっから探索するか?」 「そうだね」 「どっちでもいいけど、なるべくモンスターがいそうなところがいいわよね」 「宝箱もあるしな」  珍しくネズミ君と鉄子の意見が一致した。 「よし、行こうか」  と、小さく言って、僕は扉に手を掛けた。
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