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入学前
現代の日本は完全に階級社会だ。
上に生まれた者は常に上にいて、下に生まれた者はいつまでも下にいる。
貧富の差は広がり、固定され、この世界にもはや希望はない。
高度経済成長時代が生み出した、一億総中流という幻想は、バブル経済の崩壊と共に弾け飛んだ。
そして長いデフレを経過して、新しい下流が生まれた。最下層である。
法律。規制。社会的同調圧力。排他主義の精神。他者を攻撃することは自己を守ること。
最下層の人間の頭上には、いつも分厚いガラスの天井が横たわっている。だが、それを割る力はない。
SNSが発達し、正義の名の下に不寛容が横行する。
ガラス張りの世の中---。
いつでもどこでも誰かの目が光っている。
まさに理想的な反理想郷。
そんな窮屈な世界に希望を見出せるはずはなく、若者は人類に残された最後のフロンティアへと、舟を漕ぎ出す。
そう、異世界へと---。
この物語は、そんな現実世界に希望を失って、異世界へ行こうとする、一人の若者の物語である。
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