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そして数日後。つい最近、忘れていた問題がやってきた。
「やあ、レイラ嬢」
「あ…サイラス様、ご挨拶申し上げます」
放課後、ライをテラス席を待っている時の事、ライが来る前にサイラスが訪ねて来たのだ。
恐らくあの時、ここをよく利用しているのがバレてしまったのだろう。
それを考慮して時折場所を変えたりしていたのだけれど、今日は鉢合わせてしまった。
「今日は彼は一緒じゃないの?」
「待っているところです。教室が違いますので」
「へぇ…なるほど。ではチャンスという事かな」
「チャンス、ですか…?」
私が座っている席の対面の席に腰を下ろすサイラスに、これは容易に逃げられないな、と認識する。
「ああ。この間は断られてしまったから」
「…その節は、申し訳ございません。」
「いや、いいんだ!俺も急だったから」
この気遣いともの腰の柔らかさに、攻略中はかなりキュンキュンしていたもの。今となっては別の意味で心臓が絞められているけれど。
「それで、どうかな?空いている日はない?」
「え、えと……」
「俺との食事は嫌?」
「い、いいえ!大変光栄ですわ!でも…」
切り抜けるのが難しくて言葉尻が濁ってしまう。
OL時代はイエスマン気質だったので、断り方が分からない、というか難しい。
こういう時、すぐに脳裏に浮かぶのはライ。
困った時、いつでも助けてくれる姿が浮かんでしまって、でもすぐにそれは振り払った。
「二人で食事、となりますと…変な噂が立ちかねません。サイラス様のご迷惑にもなってしまいますかと。」
(そうよ、主人公と出会って日が経っているし、そろそろそっちに動くなら変なことはしないに限るわ)
そう思案して、極めて失礼にならないようにと断る。
しかしどうにも響かない様で
「俺から誘っているのだから、迷惑にはならないよ。」
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