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「ライ…っ」
「君か、いま彼女を口説いているから、少し待っていてくれないかな?」
「さ、サイラス様?!何を仰いますか…!!」
「うん?本当のことだろう?それとも…」
私に向けていた視線をすっとライに向けるサイラス。
その手には私の手が握られたままで、気づいて引き抜こうとしたものの力を込められてしまって抜けない。
「それとも…奪うかい?ライくん。」
まるで挑発するような声色に、どうすればいいのかと困惑する。
ここでライがサイラスの反感を買おうものなら、ライの立場が危うくなる。
(サイラス様のお誘いを受けてしまえば…収められる、よね)
心苦しさはあるけれど、元はと言えば乙女ゲームのストーリーからフェードアウトしたいというのがことの発端だ。
お父様から紹介されていなければライとも出会っていないし、こんな変なところで立場が危うくなることもなかった。
意を決して口を開こうとして、先に声を発したのは私ではなく、ライだった。
「奪うのではありません」
「へ…?」
「お嬢様は俺の主人です、サイラス殿」
近づいてきたライは、確かにサイラスを睨みつけていて。
サイラスはサイラスでそれを気にしていない、言いたげにほほ笑んですらいる。
「この人は俺の主人であって…俺のものですよ」
「ら、ライ……っ?!」
「へぇ?」
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