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「もちろん、レイラが想像した方でも結ばれたいけど、まずこっちな」
「な、によ」
「レイラ、好きだ。初めて会った時から、俺の心も体もお前のだよ」
低く、それでいて心地よく響いた声を紡いだ唇がそっと私の唇に重なった。
伝う熱が心地よくて一瞬意識が遠のきそうになって、すぐに離れた熱にまた意識が引き戻される。
眼前に広がるライの表情は嬉しそうだけれど、どこか緊張しているような瞳で私を見つめる。
こんなの、ムリに決まっている。
「レイラは?」
「~~~っ!!わ、わたしもすきぃ…!!!」
「おわっ」
言葉にした途端、心の中で何か嬉しい様な恥ずかしい様な…むず痒い気持ちがドッと溢れて、堪らなくてライに抱き着いた。
急な抱擁にバランスを崩したライは、体重を横に傾けて私の隣に倒れ込んだ。
器用にも私を抱きしめたまま。
「あ…ぶな。押潰すとこだった」
「ライ1人くらいどうってことないわよ」
「お前なぁ…。まあいいけど。」
背を撫でる手が心地いい。
悪役令嬢の取り巻きという位置から早々にフェードアウトを決めていた分、今まで自分で思っているよりも気を張っていたのか、ライの腕の中に酷く安堵してしまう。
いつも何かある度に守ってくれるライの腕の中はこんなにも温かく優しいとは。
「んん~……」
「あ、こら、寝るなよ」
「うん…」
「…はぁ。後で起こしてやるよ。」
「…ライ…」
「ん?何」
「……すきよ…」
「っ、俺も好きだよ…はぁ、くそ…かわいい」
ライの言葉を聞きながら、私は夢の中に落ちていった。
次起きた時にはもう屋敷中周知の仲になっていて、何なら外堀どころか内堀もガッチリ固まっていて。
両親はもちろん姉弟にまで『やっとか』と言われることになるとは、この時の私は知る由もない。
(おしまい)
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