72人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「お嬢様、そろそろ時間ですが」
「ふぁいはい」
「…食べながら喋らない。」
「もうっ!わかってる!!」
「わかって無いだろ、まったく…。ほら、こっち向いて」
ライの方を向くと口元をハンカチで拭ってくれる。
学園内では基本ライが敬語になるのだけれど、二人の時は砕けた話し方になる。
いつも敬語は止めて欲しいとお願いするけれど、「それはなりません」と言って頑なに崩してはくれないが現状。
いくら転生して、前世との差を理解したとしても同い年の男の人から恭しく話されるのは慣れない。慣れたくもないけれど。
「もう子供じゃないんだから、淑女らしくしろよな…」
「私がそういうの苦手だってわかって言ってるでしょ」
「ああ、まあそうだな。」
「このぅ…!」
多少生意気なところもあるけれど、実はこの男優秀で。
短く切った黒い髪は艶掛かっていて、基本無表情で顔の筋肉が動かないのだが、極々極々稀に、年に二回程度といっても過言ではないくらい稀に見れる笑い顔の破壊力はなかなかのもの。
学園に着て早三年目、たまたまそれを見たご令嬢からのアプローチはすごいものだった。未だにちらちら視線を感じることもあるし。
そして成績も優秀、なのでけれどどうもわざと落としているようで。
理由までは教えてくれないものの本人は気にしていないし何か思うところあるのだろう。ということでその件は放置した。
「ほら…行くぞ。次、移動あるんだろう?」
「うん!ライは?大丈夫なの?」
「当たり前だろ。じゃなきゃ置いて行ってる」
最初のコメントを投稿しよう!