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(…ほんと、辛辣に育ったわね)
心の中でちょこっとだけ毒づきつつも、差し出された手を素直にとった。
ーーーー…。
「ライ」
「…お嬢様。」
放課後、ライの教室に顔を出すと、珍しく驚いた表情のライ。
あんた驚くのね…、とこちらが驚いているとさっと歩み寄ってきてすぐに廊下に連れ出された。
すぐ傍の物陰に連れられて、はあ、とため息をつくライにムッとする。
「何よ?」
「何、じゃないですよ。前にも言いましたよね、俺が迎えに行くまで待って居ろって。」
「う…」
「従者を迎えに来ないよう、前から何回も言ってますよね??」
「うう……」
そういえばそうだった、と顔の筋肉を動かさず、圧をかけてくるライに思わず目を逸らした。
ライはこういうところにかなり厳しい。
淑女たれと何度も口酸っぱく言われているのだけれど、元が生粋の日本人なのでどうにも緩んでしまう。
その度に注意されて、しばらく気を付けてまたふとした時にやってしまうのだ。
(でも今日は仕方なかったのよ…!)
「お嬢様?」
「だ、だって今日は…その、イベントの日だったのよ……」
そう、今日はゲーム内イベントの日。
私とリリアンヌ、そして主人公は実は同じ教室で、今日はそこでイベントが発生する日だった。
お昼の後にそれを思い出して、マズイ!!!と授業が終わってすぐに飛び出してきた。
そこから離れれば恐らく大丈夫なのだけれど、不安だったのでライとさっさと帰ろうと思い、今に至る。
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