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そう話すとまたライがため息をついた。
「そういう事は事前に言っておいてください…」
「だ、だって!」
「…うん、わかってる。荷物取って来るから、ここで大人しく待ってるんだぞ。ここならリリアンヌ様や王太子殿下も通ったりはしないだろうから」
ポンポン、と私の頭を撫でるライ。その感触に思わず胸が高鳴ってしまったのを何とか隠すように目は逸らして「うん」と頷くと、ライは駆け足に教室へと戻って行った。
それを確認して脚の力が抜け、情けなくそこに座り込んだ。
ライはズルい。
基本無表情で顔の筋肉動かさないし、何かと母のように注意してくるし辛辣なのに、ちゃんと理解してくれているのがすごく伝わってくる。
さっきの「わかってる。」もそうだ。
思い出したことが急で、焦って来てしまったのを理解したからあれ以上なにも責めたりはしないんだ。
おまけに登場人物が来ない場所を選ぶ配慮ときたものだ。本当に、
「…ズルい。」
「なぁにが?」
つい、心の声が口に出てしまって。
そしてそれに対して降りかかってきた声にビクリ、と体が震えた。
この声はライの声じゃない。でも聞いたことがある。
と、いうことはつまり…
そろりと、伏せていた顔を上げると目に映るのは赤い髪。
予想通り、”攻略対象”だ。
「こんなところで何してんの?」
「…さ、サイラス様」
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