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「……………つらかったろう、さあお食べ」 「う、うぅぅぁぁ」 ……今思えば、これがきっかけだったんだろうか。 “某アニメ映画の名シーンをやってみたい!!” そんな風に言ってきたのは、隣の家に住む彼女。 同い年で、いっつも一緒にいた彼女。 ……たぶん、俺の初恋の人。……だと、思う。 まあ、そんなこんなで二つ返事で了承した。 「じゃあ、ウチ、女の子役やるから!!」 「………ちょっと待って、俺がおにぎりこさえるってこと?」 「そゆこと!!」 嬉しそうにはしゃぐ彼女を見ていると、断るのは申し訳ないと思ってきた。 「…わかったよ、」 「ありがとう!!」 ニカっと笑う君に、よく向日葵が映えていた。 暑くて、蝉がうるさい8月。 夏なんて、嫌いだったけれども、 「あれから、何年経ったか…」 あの時、初めて作ったおにぎりは、とても美味しかった。 いや、おにぎりなんて誰が作っても美味しいのかもしれないけれど。 でも、とっても、とっても美味しかった。 ………彼女と一緒に食べたからか? まあ、あの出来事で、俺の人生が変わったと言っても過言ではない。 「こんにちは〜〜わ、凄い!内装むっちゃ素敵!いい匂い!」 「いらっしゃいませ………ん?」 「久しぶり、あの時の塩結び、貰えますか?」 俺は今でもおにぎりをこさえ続ける。 …彼女と、俺のおにぎりを待つお客さんのために。
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