3

1/2
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

3

「犯人確保しました! 人質一名死亡、一名は無事です!」  その後は一瞬だった。  突然辺りが完全な暗闇に包まれて混乱した僕たちは、扉から一斉になだれ込んできた大勢の警察官によって取り押さえられた。「なんだこいつら! 離せよ!」と暴れている男の身体を二人の警察官ががっちりと押さえこんでいる。   「もう大丈夫だからね、お父さん」  後ろ手に縛られていた両腕がふっと軽くなり、背後から聞き慣れた声が聞こえた。僕は振り向きながら、自由になった手で口に貼られていたテープをはがす。  6年前「わたし警察官になる」と宣言して家を出た娘がそこにいた。  いったいどういうことだ。   「え、なんでここが」 「GPSよ。最近の技術は発達してるの。機械音痴のお父さんにはわからないでしょうけど」     いやそれにしても発見が早すぎやしないか。どうやって僕が攫われたことがわかったんだろう。  娘はこちらの疑問を察したのか、経緯を説明してくれた。   「少し前にあの公園の近くのマンションの住民から警察署に『外で男二人が暴れてる』って通報があってね。それで駆けつけてみたら、もうそこには誰もいなかったんだけど、その代わり現場にこれが残ってたの」  そう言って、彼女はジャケットの内ポケットから一枚の紙を取り出してこちらに見せた。  それは僕がスマホケースに挟んでいたはずの『おむかえ券』だった。男に抵抗して暴れた時に1枚だけ落としてたのか。 「まさかまだ持ってるとは思わなかったよ」  娘はくしゃりと苦笑して、そのチケットを僕に手渡す。  昔よりも少し落ち着いた彼女の声を聴いて「ああ、大きくなったんだな」と場違いなことを思った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!