思い出の蓋

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小さい頃、僕はよく家の目の前にある公園で遊んでいた。 一人で遊ぶことが多かったが、辛くはなかった。 いつも僕に良くしてくれる年上のお兄さんがいたのだ。 どこからか現れるお兄さんは会社帰りなのか、スーツを着ていた。 いつも、僕が一人でヒーローごっこで遊んでいると、声をかけて一緒になって遊んでくれた。 寂しい時に駆けつけてくれたお兄さんは僕のヒーローだった。 でも、いつからかそのお兄さんとは遊ばなくなった。 ある時、おかあさんにお兄さんのことを話をしたんだっけ。 そうしたら、よく分からないけど、お母さんがどこかに電話をしたのを覚えてる。 ただ、そのすぐ後に、お兄さんはテレビに出ていた。 お母さんはすぐにチャンネルを変えたが、僕にはお兄さんがテレビに出るほどのすごい人なのだと強く印象付けられた。 お兄さんのことを聞いても、お母さんは答えてくれなかった。 社会人になった僕は、公園で一人で遊ぶ子を見ると、ふとあの時を思い出す。 よし、今度、あの子に声をかけてみよう。 僕もあの子にとってのヒーローになるんだ。
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