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ー♢ー
春風に散りゆく桜が舞った。
流れる桃色の風に誘われるように目線を向ければそこには至福の光景が広がっている。
前を歩く同じ学校の女子生徒が2名。
校則ギリギリまで短くしたスカートを春風がいたずらのように……、
「きゃっ」
……めくり上げなかった。
鉄壁のゴールキーパーよろしく、神の手による超ファインセーブでスカートの中を覗く夢は叶わない。
「ちっ、気合いが足りてねぇな」
もちろん風の気合いである。あと3センチくらいなんとかしろよ!軟弱で困るぜ、最近の風はよぉ。
「どうせなら風速80メートルくらいでめくり上げろってんだ」
「朝からニヤついたりイラついたり無茶言ったり忙しいやつだな」
隣を歩く悪友がたまりかねて口を開く。
こいつの名前は『烏沢鳴彦』。
快活で常にやかましい。そのくせ人懐っこい笑顔を振り撒くもんだから女子に異様にもてる。おまけに金持ちの息子とあって頭も良く隙がない。ふざけんな。
唯一の弱点は俺が友達って誰かが言ってた。それを聞いて俺はその場でちょっと泣いた。
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