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「すまない。入ってもいいか?」
それは男の声だった。
なんだよ、今ちょっと傷心中なんだよ。つーか、もう一つ出入り口あるんだからそっちから入れよ。
敵意を込めてジロリと声の主を睨め付ける。
「って、うぉっ!でかっ!」
そいつは190cmはありそうなデカイ図体をしていた。
長身の割に細い印象はなく、かと言ってゴツいわけでもない理想的な体型。
精悍な顔付きに清潔感のある短い黒髪。しかし、どこか人と関わる事を嫌うような近寄り難い雰囲気がある。
ある感情が沸々と湧き上がる。
こいつ……モテるぞ。
俺は知っている。賑やかで騒がしい量産型より、こいつのようなどこか影がある男の方が女子受けがいいんだ。そして俺のように卑屈で余計な事しか言わない男が一番モテない。つらい。
その上この見た目……間違いねぇ。こいつは俺の敵だ!
「あぁ、悪い。今どけるわ」
でもなぁ、こいつ強そうだしなぁ。もうちょっと弱そうだったら強く出るんだけど。うん、最低だね俺。
「ありがとう」
礼を言ってすたすた自分の席に向かってしまう。こいつも言葉数が少ねぇな。
まぁいいや。俺もさっさと席に着こう。
一般教室より一回りほど狭い教室内には机と椅子が5つ、縦3列に分けて置いてある。
廊下側に1つ。真ん中と窓側は前後に2つという配置だ。
その廊下側の席にデカ男は座った。
座席表を見ると俺は窓側の前。その後ろがクール女子になっている。
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