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彼女が僕の手を引いて、潮風を切る。
波打ち際まで来た。ここはちょうど山の中腹あたりだ。僕だけが足を止めた。
「どうしたの?」
止めた足に、彼女がたずねる。
「ぼく水着もってきてないし。ちょっとこわいよ」
「こわがらないで。そのままでも泳ぐことができるし、潜ることもできるから」
そういって彼女は僕の腕を引いた。ざー、ざー、ばしゃん。海がつま先に染みる。ばしゃん、ばしゃん、ばしゃん。今度は波も切る。しょっぱい風。冷たい水。海が膝から腰へ。波を切りながら、腹へ胸へ。
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