海に呼ばれて

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 あれは小学生の夏の不思議な経験。  いつも通り、昼下がりの公園でサッカーの練習をしていた。裏山にある小さな公園を僕ひとりで独占して、ボールを壁にあて汗を流す。ふと空へ目をやると入道雲が夏の顔をして立っている。 「わたしもまぜて」  蝉の鳴き声の中に、女の子の声がした。僕はボールを蹴るのを止め、彼女の方を見つめる。僕と同じくらいの年で、真っ白いワンピースを着た、知らない子だった。 「……いいけど」  夏の午後特有のじめじめした静寂の中、僕らはボールを蹴ったり投げたりして遊んだ。  しばらくして、彼女が海へ行きたいと言いだした。
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