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結局、かっちゃんはラジオ体操最終日まで来なかった。わいたちは、かっちゃんのお母さんから、かっちゃんの出欠カードをもらって、ノートに変えに行った。
そして、わいの部屋に集合や。
表紙に「トレインダッシュ おにかんとくノート」と、できるだけ綺麗な字で書いた。みかんに汚いって言われるけど、わいにはこれが限界や。かっちゃんが、すごすぎんねん。
それから、ノートの中に線路を描いた。
かっちゃんみたいに、上手には描けへんけど、線路ぐらいやったら描けるで。いっぱい描いた、いろんなところに分かれている線路を描いた。いろんなところに繋がっている線路を描いた。
みかんは、学校やレストラン、病院を、ゆたやんはサッカー場や公園、プールとか描いてくれた。
線路でつなぐ、線路で別れる。
「
みんなどっかにいるで
トレインダッシュ に のってきて
まってるからな!
おにかんとく。かっちゃん。
」
と最後に、できるだけ綺麗な綺麗な汚い字で書いた。
わいらはノートを持ってかっちゃんの家に行った。
かっちゃんのお母さんは、ノートを見て、なんか嬉しそうな複雑な顔しながら向こうを向いた。
あー、やっぱり絵が下手やから、なんかあかんかな?
「ありがとう、ちゃんと伝えるからね」
そう言うと、かっちゃんのお母さんの肩は震えている様に見えた。
「うん。お願いします」
それだけ言って、かっちゃんの家を後にした。
夏休みが終わっても、かっちゃんは戻って来なかった。
でも手紙がきた。
相変わらず綺麗な字や。
「
ぼくは なつやすみのもくひょうをたてた。
ぼくかならずもどってくる。あきらめない。
でも しっぱいした。
だから、ぼくのなつやすみはえんちょうです。
せんろ、ありがとう。
いっぱいある。
つづいてる。
つながってる。
ありがとう。
」
そして、トレインダッシュの絵が描いてあった。
それを見て「絵うっま」って、ゆたやんと、みかん、そして わいが被って言った。
ハハハハハハって笑えた。
つながっている、続いている、なければ作ればいい。
今は、ちょっと駅に止まってるだけ。
マイペース、マイペース。
線路、ほんとに、つながってるんやで。
だって、もう少し先になるんやけど、変なところでまた、かっちゃんと会うねん。つながんねん。不思議やわー。
Fin
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