あー、あの日の、わいの冒険 1年生 その6 「チームトレインダッシュ」

2/9
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 梶本君のお母さんが答える。 「ありがとう。でも、ごめんね。ちょっと運動は」  梶本君は、お母さんの話を手で遮って自分で喋り始めた。 「僕、糖尿病だから、そんな運動できへんねん。でも見ててええ? 面白そうやから」 「糖尿病?」 「うん」 「ふーん」  わいは、この時、まだ糖尿病という病気を知らんかった。 「フフ、だけど、涼石(すずいし)君たち見てるだけでおもろいなー」 「なっちゃんでええで、みんなそう言うから。そんで、ゆたやん、そしてこっちが、みかん」  みかんが、わいの頭をバシッと叩いてくる。  イテッ! 「ちゃんとちゃんつけて。みかんちゃん、で」 「ちゃんとちゃんちゃんつけてって、おやじか!」  バシッと、みかんがまた叩いてくる。  梶本君がハハっと笑う。 「かっちゃんでええか?」 「えっ?」 「かっちゃんな」 「わい、なっちゃん。ゆたやん。みかん。そして、かっちゃん」 「みかんちゃん」  みかんが力強く言った。 「そこで見ててや」  わいがそう言って戻ろとしたら。 「まって、あの、鬼ごっこ、氷鬼にしたら」  とかっちゃんに呼び止められた。 「氷鬼?」 「ほら、捕まったら氷になって固まんねん。だけど、他の人がタッチすると、また動ける様になる。それやったら、鬼に捕まっても助けられるから、もっと続けられると思うよ」 「おおおー、なるほど」  わいら3人は納得した。 「かっちゃん、監督や」  ゆたやんが呟いた。 「ほら、サッカーの試合でも監督がベンチから指示出すねん。こうやってな、足組んで、サングラスかけて、椅子に座りながら」  と、ゆたやんが監督の物真似をする。 「おおー、じゃあ監督や。また、何かあったら指示だしてくれ」  わいが、かっちゃんに言うと。 「うん。うん。分かった。任せて」  ちょっと、嬉しそうやった。  わいらは、また、みかんの父ちゃんの所へ戻る。  戻る途中、みかんに呼び止められた。 「ねえ夏生君。私も。夏生君のこと、なっちゃんって呼んでええ?」 「え、ええで」 「うん」  そういうと、みかんは全力で走って行った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!