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梶本君のお母さんが答える。
「ありがとう。でも、ごめんね。ちょっと運動は」
梶本君は、お母さんの話を手で遮って自分で喋り始めた。
「僕、糖尿病だから、そんな運動できへんねん。でも見ててええ? 面白そうやから」
「糖尿病?」
「うん」
「ふーん」
わいは、この時、まだ糖尿病という病気を知らんかった。
「フフ、だけど、涼石君たち見てるだけでおもろいなー」
「なっちゃんでええで、みんなそう言うから。そんで、ゆたやん、そしてこっちが、みかん」
みかんが、わいの頭をバシッと叩いてくる。
イテッ!
「ちゃんとちゃんつけて。みかんちゃん、で」
「ちゃんとちゃんちゃんつけてって、おやじか!」
バシッと、みかんがまた叩いてくる。
梶本君がハハっと笑う。
「かっちゃんでええか?」
「えっ?」
「かっちゃんな」
「わい、なっちゃん。ゆたやん。みかん。そして、かっちゃん」
「みかんちゃん」
みかんが力強く言った。
「そこで見ててや」
わいがそう言って戻ろとしたら。
「まって、あの、鬼ごっこ、氷鬼にしたら」
とかっちゃんに呼び止められた。
「氷鬼?」
「ほら、捕まったら氷になって固まんねん。だけど、他の人がタッチすると、また動ける様になる。それやったら、鬼に捕まっても助けられるから、もっと続けられると思うよ」
「おおおー、なるほど」
わいら3人は納得した。
「かっちゃん、監督や」
ゆたやんが呟いた。
「ほら、サッカーの試合でも監督がベンチから指示出すねん。こうやってな、足組んで、サングラスかけて、椅子に座りながら」
と、ゆたやんが監督の物真似をする。
「おおー、じゃあ監督や。また、何かあったら指示だしてくれ」
わいが、かっちゃんに言うと。
「うん。うん。分かった。任せて」
ちょっと、嬉しそうやった。
わいらは、また、みかんの父ちゃんの所へ戻る。
戻る途中、みかんに呼び止められた。
「ねえ夏生君。私も。夏生君のこと、なっちゃんって呼んでええ?」
「え、ええで」
「うん」
そういうと、みかんは全力で走って行った。
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