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ページをめくる。
そこには、スタートダッシュ、腹筋、スクワット、ジャックナイフ、クランプ、腕立てなど筋トレのきれいな絵が描いてあった。
いや、綺麗なのはええわ。
ふっきん50かい、スクワット50かい、うでたて50かい……
まいにち!
これ、鬼やろ。
かっちゃんは、俺らをどうするつもりや。
ゆたやんの冊子をみると、ボールを使った筋トレが、みかんの冊子をみると、軟体動物の様な柔軟体操が描いてあった。
「鬼やな」と3人で呟いて目を合わせる。
本当の鬼ごっこの鬼、鬼の中の鬼がここにいた。
かっちゃんの母ちゃんが笑っている。
「ごめんなさいね。ビックリした? ビックリしたら、次のページもみてみて」
「うっそ。まだ、あんの?」
さらに追加のトレーニング。
と思いきや……
「うそだよん」
と大きく書かれていた。
なんでやねん!
ビックリした3人を見て。
かっちゃんのお母さんが、フフッて笑う。
そして、きれいな文字で文章が続いている。
「
ねっちゅうしょう に きをつけてね。
ひとりで ぜったい れんしゅう しないでね。
ぼうし かぶってね。
スポーツドリンク のんでね。
けがにも ちゅうい。
いたくなったら びょういんね。
いやなら、きゅうけい。
やめてもいいよ。
」
ページをめくる。
壁にかかっていた電車の絵と同じものが描いてあった。
「
でんしゃだったら ぼくも
みんなと いっしょにのってられるかなと
おもったんだけどね。
ぼくは ちょっと おりなきゃ。
ごめんね。
でも、ありがとう。たのしかった。
あの、その ちょっとだけでいいから。
わすれないでほしいな。
ちょっとだけ。
」
「ビックリしたかどうか、ちゃんと見といてって言われてたの。ありがとうね。入院、もう少し長くなりそうだけど、楽しい報告ができそう。元気出ると思う」
かっちゃんのお母さんが笑っていた。目頭を押さえながら。
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