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追ってきた男の姿が小さくなる。
「おい。何であいつは俺のこと気づかねぇんだ」
「このクルマは後部座席にセーフティガードが取り付けられていましてね、窓を閉めている限り、外からは空席にしか見えないんです」
「あぁ。だから乗せてくれって言ったのか」
「はい」
「このタクシーのことは、人から聞いて知ってるんだけどよ。そういうシステムになってるとまでは知らなかった」
「本来はこのあとがメインなんですけどね」
「メイン?」
客はクルマが消えることまでは知らない。
「あいつんちは大手の会社の息子でよ」
「今の方とお知り合いですか?」
「知り合いなんかじゃねぇよ。あそこの会長ってのがワルでよ。おいしいもんばかり持っていきやがって、うちの会社に尻拭いさせて責任を全部負わせようって汚いやつなんだ。
本来うちが貰うべきもんまで奪ってってよ。だから奪い返してやったのさ。会長のヤロウどこに雲隠れしてんだか」
そしてその先にある自販機を見つけると、運転手は飲み物を買いたいと客に一時停車を求めた。150円を持ち、クルマから離れる。
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