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「会長。早くしないと。マスコミがこの場所を嗅ぎつけてきたら大変です」
秘書に背中を押され、会長は否応なしに後部座席へと身をかがめる。
「では会長をよろしくお願いします。代金は振り込んでありますから」
「あぁ。確認済みですよ。だから来たんです」
行き先は申し込み時に秘書から聞いている。その場所へ誰にも見つからず会長を送り届けるのが今回の仕事。
夢タクシーの料金は通常運行の他に特別運行設定があり、料金は通常の5倍。公にこそしていないが、何らかの理由で極秘にその場から離れたいとき特別料金にて運行する。それを利用しなければならない一部の人間のみぞ知るこのタクシー。それなりの需要がある。
夢タクシーはその名をイメージするように、車体は七色のラインが目印。見た目はごく普通の個人タクシーである。
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