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後方から、赤灯を回したクルマが止まり、警察官が運転手の後ろを横切った。
「おや。誰かお迎えかな?」
人ごとのように、気にせずお茶を取り出した。ふと振り返ると、タクシー周辺が物々しい雰囲気に包まれていた。
「どうしたんです?」
「貴方このタクシーの人? 実はこの周辺を警備中に盗難の通報が入りまして、黒い鞄についているGPSを追ってたんですよ。そしたら貴方のクルマに行きつきまして」
「僕の?」
「室内確認していいですか」
「どうぞ」
警察は後部ドアを開ける。すると居ないと思っていた後部座席に、鞄を抱えている男を見つけた。
「あれ。あんた今いた? その鞄は貴方の?」
「中身、見せてくれる?」
客は観念したのか、途端に逆ギレした。
「何が夢タクシーだ! 空席にみえるとか嘘いいやがって。わざと自販機の所に停めたな?
あの会長にしろ、みんな俺を騙しやがって。汚いぞー!」
客はタクシーから下ろされ、鞄は没収された。
「何だ、あいつは。折角警察が保護しに来てくれたのに文句いうなんて。贅沢な奴だな」
運転手はお茶を飲みながらパトカーを見送った。
「あっ、待て。5倍の料金!」
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