目的地はワカイビル

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 若井ソウマ建設株式会社。社員百数十名、創立八十年の建設会社。地方で創業し長年地域密着型のスタンスでいたが、十年ほど前に首都圏に本社を置いた。新参者のためテレビではCMを使い、子どもの声で社名を歌ったメロディを流す。今やその名を知らない者はいないほど、成長を伸ばし続ける。  クルマが動き出すと秘書は深々と頭を下げた。夢タクシーはそのまま走り、駐車場の出口手前で姿を消した。 「相変わらず不思議なクルマだ。どこをどうしたらクルマごと消えるんだか。異次元的な通路でも見えないどこかに存在するのだろうが、一度乗ってみたいものだ。 ーーさてさて。あとはマスコミ対応か」  エレベーターでワカイビルの1階に上がると、自動扉の向こうにたくさんの記者が控えていた。ビル内で何か動きがあると、外からカメラのフラッシュがたかれ、注目の的になる。  秘書は自らマスコミ対応のため、自動扉に向かって歩き出した。  
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