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鈴音さんと並んで振り向く。 目の前の壇上には、俺の両親、おかみさんが並んでいて、アキさんがそこに加わる。 俺たちは、人前式(じんぜんしき)を選んだ。 お互い決まった信仰がないせいか、神様に誓うという行為に、なんとなく実感が沸かなかった。それよりは、お互いの大切な人たちに誓うほうがしっくりくる、と意見が一致した。 俺は、まっすぐに4人を見つめて誓いを述べる。 「本日、わたしたちは皆様の前で結婚の誓いをいたします。私たちは偶然、隣室に住んだことで出会いました。ただのお隣さんでしかなかった私たちの出会いは、おかみさんの数え間違いで動き出し、おかみさんの重すぎる荷物で大きく発展しました。」 背後で、姉たちがクスクス笑う。馴れ初めを根ほり葉ほり聞いて楽しんでいたので事情を知っているのだ。
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