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絢と圭
いつも通り登校して、いつも通り授業を受けて、いつも通り部活をして、いつも通り下校する。これが、私の日常の筈だった。
この気持ちに気づくまでは。
「絢? どうしたの?」
昼休み。
前の席の女友達に声をかけられ、私は意識を引き戻した。
「あ、ううん。何でもないよ。何の話だっけ」
「あ~や~? 嘘はイカンよ、嘘は。また九条君に見惚れてたんでしょ〜」
友達がニヤニヤしながら訊いてくる。
「はぁ〜? 私がアイツを? ないない。アイツはただの幼馴染よ。それ以上でも、以下でもないわ」
言葉とは裏腹に、心臓が飛び跳ね、顔が熱い。たまらず、
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
そう言って、教室を出た。
夏の爽やかな風が頬を撫でる。やはり屋上は気分を落ち着かせるのにもってこいだ。
二、三回深呼吸をして空を見上げると、それまでのモヤモヤが全て快晴の空みたいになる。
「私が圭をねぇ......」
素直に認めてしまえば楽なのに、変に意地を張ってしまう。これは、私の小さい頃からの悪いクセだと思う。
いやいやいや、私はK君のリアコよ。恋愛的な意味で、K君が好きなのよ。アイツなんか、好きになるわけないじゃない。
とは言っても、私は自分の性格があまり好きじゃない。どんな些細なことも、意地を張って強気に出てしまう。直したいとは思うけど、人間、そう簡単には変われない。
「そういえば、あの時も圭が慰めてくれたっけ......」
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