絢と圭

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〈十二年前〉  幼稚園に通っていた頃。皆で折り紙を折っていた時、どうしても上手く折れない箇所があった。  「せんせえーあやができてないよー」  隣に座っていた男の子が、大声で言った。  私は皆ができることが、私にはできないことが恥ずかしくて、必死でキレイに折ろうと頑張っていた。それを皆に知られたことが嫌で仕方がなく、  「ちょっと! なんでからかうの! わたしはひとりでできる!」  必要以上に強い言い方をした。  「えーなんでそんな怒るんだよ。おれはせんせえ呼んでやろうとしたのに。なんでいつもこわいかおしてるんだよ」  男の子はそう言って、他の友達の方へ行ってしまった。  「あや? どうしたんだよ、ぼーっとして」  当時四歳の圭が、帰りの道中、急に話しかけてきた。  「え、なんで? こわいかおしてた?」  私は少し焦りながら訊き返した。  すると圭は、無邪気な笑顔でこう言った。  「いや? お前のかおはすっげえかわいいよ。アイツはああ言ってたけど、おれはお前のかおがこわいなんて思ったことねーぞ」  私が考えていたことをサラッと当てに来る。  どうしてわかるのだろう。当時の私は、圭が魔法使いだと、本気で信じていた。だって、私の思っていることが、なんでもわかってしまうから。
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