絢と圭

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 ガタン  後ろの方で、屋上の扉が閉まる音がした。私がここに来た時はしっかり扉を閉めたはずだから、風で閉まるとか、そういうのはありえない。友達が呼びに来たのかな。  ぽふっ  「えっなにっ」  頭に誰かの手が置かれた。明らかに女子の手ではない、大きな手。女子はまず履かないスラックス。  その手を(はた)こうとしたその時、  「なーに考え込んでんだよ」  聞き慣れた優しい声がする。  呼びに来たのは友達ではなく、圭だった。圭が私の頭の上に左手を乗せて、ため息をついている。  「どうした? 何か悩み事か?」  「い、いや、何でもないよ。ちょっと外の風にあたりたかっただけ」  流石に「アンタのせいでこうなってんのよ」とは言えなかった。  「そうか? まあ何かあったら、遠慮せず言えよ?」  この男はまたこうやって......自分がどれだけモテてるのか知らないのかね。  でも、ありがとう。  面と向かっては言ってやらないけど。  「あ、そうそう。今週末、この辺の地域で夏祭りあるじゃん。それ、一緒に行かね? 二人で」  突然すぎない? 心配した直後に祭の誘いって。しかも二人きりって。バカなの?  「......ちょっと待って、その日の予定確認したいから、帰って確認したら伝える」  「おう、わかった。じゃ、とりあえず教室戻ろうぜ。そろそろ昼休み終わるし」  圭はそう言って、私の手を引きながら階段を降りていった。  音漏れしてるんじゃないかってくらい、うるさいドキドキ。圭に聞こえていないことを祈る。
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