約束のカラーボール

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トモキたちとカラオケに行って、1杯299円の居酒屋で飲んで、下宿生の友達の家でゲームをして、家についたころには時刻は日をまたいでいた。 俺はジャージに着替え、アルコールでちょっとふわふわした意識で夜の河川敷に出た。 今日も走る。野球をしていたころからの習慣だ。大学に入学してからも飲み会の後でも、遅くまでバイトをした後でも、毎日数キロは走らないと、歯を磨かずに寝るような、気持ちの悪さを感じるようになっていた。運動部だったころの成分がまだわずかに残っているのか、体を動かした後の疲労感を中毒的に求めている自分がいる。 中途半端に運動しているからこそ、いろんなものにむしばまれて全盛期の体からはちょっとずつ遠のいていくのを感じる。たるんだお腹をつまみ、おっさんになった~、とおどけあう大学の友達の中で、たぶん俺だけがうまく笑えていない。 千鳥足とまでは行かないが、さすがに飲んだ後だったから足取りは重い。 右足が自分の左足につまづいて、俺は盛大にこけてしまった。なぜか、痛みが遠くに感じる。思っていたよりも飲んでたんだろうか。 静かだ。そこで初めてこの河川敷で俺の足音だけが響いていたんだと気づいた。 そのまま仰向けに寝転んで夜空を眺めた。地元と違い、街の明かりが星を溶かす藍色の空。あの天然のプラネタリウムはずっと遠くの空に置いてきてしまった。 コンクリートの冷たさを背中に感じていると、だんだんと酔いもさめていくような気がした。 次の日、おれは伸びた髪を切った。
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