第1話『朧月の夜、少女の運命は狂い始める』

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―コン、コン。  そこへ控えめなノック音が玄関から聞こえた。 「ごめんください。新橋です。すみません、遅れてしまいました」  新橋の穏やかな声に、一気に食卓の空気は和らいだ。 「全く。遅いじゃないか」  父はそう言いながらも表情は柔らかだ。母とひわもお互いに顔を見合わせて、ほっとしたような笑顔になる。 「はーい」  家族を代表してかすりは玄関を開けた。 「もう。遅いよ新橋…さ…ん?」 「お姉ちゃん?」  後ろからひわが不思議そうに声を掛けてくる。 それでも、目の前の光景に上手く頭が回らない。
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