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「…新橋さん、あの、その、恰好は…」
やっと絞り出せた声は震えていた。父と母も不審に思ったのか玄関に顔を出す。
「新橋君?どういうことだ?」
「…これからかすりのお誕生日とあなた達の結婚祝いをするのよ…。その恰好は…どういうことなの?」
かすり達4人が混乱する中で遅れてやってきた婚約者はにっこりと微笑んだ。
濃い茶色の髪は短く切りそろえられ、水色と緑色が混じった瞳は優しく細められる。頭には菅笠を被り、着物は動きやすい物。脚絆に草鞋。
どう見てもこれから食事をする恰好ではない。
「これから城へ向かうのです」
「し…ろ?」
「えぇ」
「何をふざけたことを言っているんだ。かすりとの結婚はどうなる?」
父の怒声にひわはびくりと肩を震わせた。かすりは目の前のことが信じられなくて、新橋を見つめることしかできない。
「かすりさんとの婚約は破棄させて頂きます。今日はその謝罪と、出発の報告に来たのです」
新橋が、何を言っているのか、かすりには理解が出来なかった。
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