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「実は、僕は以前より城勤めをしたいと思い、城の役人試験を受けていました。村の役人試験は受かりましたが、城勤めとなると中々合格することができず…。何年も試験に挑戦していました」
「そんな話、聞いたことがない」
「はい。これは僕の昔からの夢…。僕の家族にも誰にも言っていませんでした。しかし、今回の試験で条件付きではありますが、試験に合格することができたのです」
目を輝かせて語る新橋はひどく嬉しそうで、かすり達との溝は深まるばかり。母はついに顔を両手で覆ってしまう。
新橋とは小さい頃から一緒にいたのに、夢の一つも教えてくれなかった。そのことに、今更ながらかすりは何も知らなかったのだと痛感する。
「だが…確かに城勤めでこの村を出るとしても、かすりも一緒に連れていけばいいだろう。何も婚約破棄する必要はない」
父が呻くように言えば、新橋はいいえと言って首を横に振る。
「条件があると言いましたが、それによって結婚することができなくなったのです」
「条件って、なんですか…」
かすりは掠れた声で尋ねた。
「それは…宦官になることです」
「かん…がん?」
初めて聞いた単語だ。かすりが意味を理解できずに混乱していると、父は拳を机に叩きつけた。
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