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「同じ物を食べてるのにこの差はなに…」
「なんでしょうね?」
もうと頬を膨らませるひわに苦笑すると、後ろから控えめに声を掛けられた。
「かすり様、あとは私が致します。どうか部屋へお戻りください」
薄紫の小袖姿の女性はそう言うと深く頭を下げる。
「ゆかり姉さん!今日はもう会えないと思っていたんだよ。わたしは今日でこの家は最後になるし…会えて嬉しい」
「私にはもったいないお言葉です」
「そんな…最後くらい前みたいに話してくれたって…」
「お姉ちゃん」
咎めるように呼ばれて振り向けば、ひわは嫌悪感を隠さずに睨みつけていた。
「…ひわ?」
「お姉ちゃん、お母さんが言ってたよ。奴隷と話しちゃ駄目だって」
「でも、ゆかり姉さんはわたしにとっては本当の姉さんみたいな人で…」
「私とお姉ちゃんは姉妹。でもその人は違う。奴隷なんだよ。奴隷は私達とは存在が違うの。学校でも習う常識だよ」
「ひわ…」
「ひわ様のおっしゃる通りでございます。かすり様、どうぞ部屋へお戻りください」
「ゆかり姉さん…」
「ほら、早くいこ」
ひわは持っていた洗濯物を乱暴に篭へ放り込むと、かすりの手を強引に引っ張る。有無を言わさない行動に、かすりは従うしかない。
家へ入る前に見たゆかりは、頭を下げた姿勢のまま動くことはなかった。
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