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約束の時間を過ぎても新橋は現れない。食卓にはかすりと新橋の好物や、お祝いの日にしか食べられないような豪華な料理が並んでいる。時間ぴったりに出来立てを食べようと計算していたのに、これではそれが無駄になってしまう。
「新橋君は遅すぎやしないか?」
「ええ…。仕事ならもうとっくに終わっているはずなのに…」
父と母が訝しむ。妹もその様子に不安を隠せないようだ。当人のかすりはというと、食卓の横にある窓からぼんやりと夜空を眺めていた。
窓の外には1本の木が生えていて、枝が窓へと伸びている。その枝の先には1羽のお客様がきていた。
「どうしたの?あなたもお祝いに来てくれたのかな?」
そっと手を伸ばせば、小さな小鳥はかすりの指に止まってチチッと鳴いた。
「そっかぁ。ありがとう。でもね、別に遠くに行くわけじゃないんだよ。この家の少し先にある新しい家に引っ越しするだけ」
小さく羽ばたきをする小鳥にかすりは微笑む。特技、というわけではないが、昔から動植物が何を感じているのかがなんとなくわかるのだ。
そのおかげか、こうやって小鳥や様々な動物が遊びにくることがある。夢中になって話してしまうので、結婚したら控えるようにと父母によく言われていた。
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