第1話『朧月の夜、少女の運命は狂い始める』

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「かすり、笑っている場合ではないだろう!」 「ご、ごめんなさい…」  怒鳴り声に驚いた小鳥が夜空へと飛び立ってしまう。 「お前はいつも1人でブツブツと…」 「あなた落ち着いて」 「こっちは気が気じゃないっていうのに…」  新橋の遅れが相当頭にきているのだろう。父はその苛立ちをそのままかすりにぶつけてくる。 「だいたいお前はいつも1人で喋ったりして、村の人達に変な奴だと言われているのを知らないのか。こんな時にまで1人で喋るなんてどうかしているだろう」 「…はい…」 「あなた、でも、かすりは村で一番の器量良しと言われているし、学校でも成績はトップだった。そのくらいのことはマイナス要素にはならないわ」 「だがなぁ…」 「お姉ちゃんはいつもお父さんとお母さんの言うこと、きちんと守ってるよ。だから、お姉ちゃんを怒らないで」  母とひわが助け舟を出してくれたおかげで、父の叱責は収まった。腕を組んでむっすりと黙りこんでしまう。 空気は最悪だ。母とひわに目線だけでありがとうと告げると、いよいよ食卓には重い空気しか流れない。
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