最後の出迎え

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 私の人生は……人から見れば『社畜』と言われても仕方のないモノだったと振り返る。  毎日毎日「仕事仕事」と自分の家族ですら、ろくにと過ごした記憶がない。 『お父さーん』  仕事中。公園ではそう言って駆け出す子供の姿を遠目で見る事はあった。  しかし、自分の子供がそういう風に笑顔で駆け寄ってくるイメージが出来ない。  それでも私は仕事に没頭し、ふと気がつけば子供たちは成長し、また気がつけば結婚して家を出た。  あれだけ毎日仕事漬けだったのだから、仕事仲間もたくさんいる様に思われた事もあった。  でも、それが何故か「仕事と言いながら、実は浮気しているのでは?」とそんな風に疑われた事もあった。  実際のところは、浮気している暇もなく本当に仕事漬けだったのだが……。 「……」  ずっと仕事に没頭していた私に『友人』と呼べる存在もおらず、また仕事仲間もいなかった。  だからなのか、仕事漬けから解放された晩年は……何もなくなった虚無感から、外に出る事もなく、塞ぎこんだ。  ――婆さんには申し訳ない事をしたな。  こうして改めて考えるのは、家族の事だ。結局、私は今まで『家族のため』には何もしてやれず、今では病院で寝たきり。  ――私は、いつ死んでもおかしくない。  自分でもそう思う。しかし、婆さんなら遺されても大丈夫だろうとも思う。頑固者で堅物な私と違い、婆さんは人当たりもよく娘や孫たちとも仲が良い。 「……」  ――たとえ、私がいなくなったとしても……何も心配はする事ない。 「!」  そう思いながら顔を上げると、突然差し込んで来た光に思わず目を閉じた。 「……」  そして、突如として一面に広がった花畑に私は思わず目を疑った。  なぜなら、私は病院のベッドではなく、自分の足でその花畑に立っていたのである。
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