お見送り

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「まずここに名前を……それから、ここに転生希望先を……」  僕が人差し指で丁寧に項目を示しながら、硬質な字で埋まっていく欄を目で追う。  全て埋まったところで「お疲れ様でした」と僕は労いの声をかける。それから女性に渡し、今度は輪廻転生証明書を発行してもらう。  それを受け取ると、僕はおじさんと一緒に転生を待つベンチに座った。 「君は若いのに、何で死んだんだ?」  さっきとは打って変わって、おじさんは大人しい調子で僕に問いかけてきた。 「あー自殺です。首を吊ったんですよ」  おじさんは驚いたように僕を見つめる。 「そりゃあまた、なんでだ? 今時の若いやつは根性がないと聞くが、何も死ぬなんて親不孝せんでもいいだろ」  おじさんが憤懣やるかたないといった様子で、僕の方に身を乗り出す。 「だいたい、今時の若いやつは貧弱すぎるんだ。ちょっと命令しただけで、パワハラパワハラだと騒ぐ。すぐに鬱だの、体調不良だので会社を簡単に休む。根性が足らんのだよ」  大人しくなったかと思ったけれど、そんなのは一瞬だけのようだった。  わーと喚いているうちに、おじさんが呼ばれる。  僕が呼ばれましたよ、と言って立ち上がると、おじさんも怒りをあらわにしたまま立ち上がった。  転生先に繋がるエレベーターの前まで立つと、おじさんが「わかったか? 来世はもっと根性を持つんだぞ」と僕に喝を入れた。  言いたいことを言ったようで、スッキリしたのだろう。やや軽い足取りで、エレベーターに乗り込んでいく。
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