グルメの休日

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グルメの休日

 様々なカラーの電車から吐き出された通勤客が足早に違うカラーの路線を目指し、又はそれぞれの会社へと通じる出口に急ぐ姿が絶えない平日午前8時半の東京駅。 「お待たせーー」  ソプラノ歌手のような美声を発し、プルンとした二の腕を振るのは田辺好実(たべこのみ)36歳独身、通信系の会社で派遣社員として働いている。    彼女の生き甲斐は食べる事。  好物は天ぷら、唐揚げ、焼き肉に大盛ホカホカ白飯。  マヨネーズに醤油を混ぜたディップを付けるのがお薦めだ。  勿論、甘い物も酒も大好きだった。  今日は有給を使って大学時代からの友人、大越塔子(だいえつとうこ)と日帰り箱根秋の味覚ツアーに参加する事になっている。  日々、職場で溜まるばかりのストレスをグルメで発散させたいところだ。   「あれ?また体重増えた?」  東京八重洲口の高速バス乗り場で待ち合わせの塔子から、開口一番容赦無い言葉が浴びせられた。 「え?そんなに変わってないよう。最近体重計乗ったけど」  嘘だった。  かなり増量していた。  今までの人生、ダイエットを志した事は何度もあった。  
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