生きてなよ

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 夏休みの出校日を終えて学校から帰ると、おばあちゃんが奥の座敷に座っているのが見えた。  背中しか見えないが、畳の上に真っ白な布が広げられていてピカピカで金色のあれこれが並べられている。 「ただいま。何これ、どうしたの?」  ランドセルを下ろして手に持つと、しゃがんでその金色のモノに手を伸ばした。 「ダメよ!ダメ!!」  パッと手を持たれてちょっとびっくりする。  こんな素早く反応して動くおばあちゃんを初めて見た。  真っ白の手袋をして真剣な顔をしているおばあちゃん。 「ちょっとそこに正座して」 「え、普通に座るのじゃダメ?」 「ダメ。正座」  あー、話しかけなきゃよかった。  思いながらランドセルを隣の座敷に置いてその場に正座をする。  時刻はまだ11時でお母さんにお昼と呼ばれるまでも少し時間があるし、今日に限って習い事も英語だけ。あー、6時まで時間もあるのか。  姿勢を正しながら、逃げ出すネタを頭の中で必死に考えた。
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