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「これは御磨き。もうすぐお盆だからね。全部出して磨くのよ」
「へぇ……」
聞いていないのに説明が始まってげんなりする。
「もう1つ白手あるから着けて」
「ハクテ?何それ」
おばあちゃんは持っていたモノを丁寧に置いてから側にあった白い手袋を渡してきた。
「え、やらないよ」
「やりなさい。この家を継ぐなら覚えてもらわないと」
またか……思いつつ手に着けていく。
やるか!!って投げつけてやれたら……思いながら押し留めて、ふーっとゆっくり息を吐いた。
それを集中する何かと勘違いしたのか、おばあちゃんは満足そうに真っ白な布巾も手渡してくる。
「これを付けて……こうやって磨くのよ」
謎のクリームを布巾に付けてくすんだ金属に付けるとピカピカと一気に色が変わった。
「え、めっちゃキレイじゃん!」
「そうよ。こうやって全部綺麗にしてお迎えするの」
投げ出そうとしたのを忘れて真似てみる。なのに思ったより綺麗にはならない。
「そうじゃないの。クリームを伸ばしつつ……違うのよ。そんなに力は入れないで」
いつの間にか真剣に磨いていた。
「これでどう?」
「うん。今年は麻美も手伝ってくれたからご先祖様も喜ぶわ」
嬉しそうに笑うおばあちゃんを見てちょっと照れる。
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