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結局、また乗せられた。
思いつつ、ピカピカになった仏具を見ていると満更でもないと思ってしまうから困る。
「もう1つお願い」
「無理!宿題してないし!」
「そんなのすぐできるでしょう?」
「今日、英語だもん!行く前にやっとかないとでしょ!」
このままここに居たら最後まで全部手伝いをやらされるのは目に見えていた。
「1人では大変なのに、もう」
おばあちゃんはため息を吐いてまた1つ磨き始める。
「なら業者とか……誰かやってくれないの?」
こっちだってため息を返して白手を外した。
「頼むのは簡単よ。でも、いつかお迎えに来て頂くのに……ちゃんと自分たちでお手入れしてお世話はしておかないとね」
おばあちゃんは仏壇を見上げてすぐ脇に並ぶ欄間の上の遺影を見つめる。
「麻美は全員わかる?」
「1番右から、おじいちゃん、さきくん、ひいおばあちゃん、ひいおじいちゃん、ひいひいお……どっち?」
「ふきさん。おじいさんのおばあちゃんよ」
正座をしたまま見上げるその顔は決して過去を懐かしむ顔ではない。辛い過去を思い出し、苦しみと悲しみに襲われている顔。
どう見たってずっとさせていい顔じゃなかった。
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