10人が本棚に入れています
本棚に追加
鬼子捜し(三)
「仕掛けますか?」
「ああ」
短く応じて、晴道が懐から短刀を取り出す。刀身に梵字が彫られた代物を、柄を持って投げ打った。それは、すぐに軽い音を立てて木に刺さる。
刹那。
陰に隠れる者が動いた。攻撃に反応して、姿を現したのだ。だが、襲ってくることはなく、木の間をすり抜けて消えてしまった。
「外しましたね」
「わざとだよ」
しれっと言う師に、玉瀬は怪訝な顔を向けた。
「……とにかく、もう一度追わないと」
「いや、今日はこれで十分だ」
「え? どうしてです?」
首を傾げると、晴道が告げてくる。
「俺はな、村人が小さな子どもの姿を見つけた時、動けないほど慄いたってのが、どうにも妙だと思うんだ。初めから襲ってきたわけじゃないというのに」
最初のコメントを投稿しよう!