ある違和感(一)

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ある違和感(一)

 唐突な言葉に、玉瀬は目を丸くした。  しかし、すぐに冷静な意見を返す。 「小さくても、見知らぬ者に変わりはないでしょう? 暗がりの畑にぽつんと見つけたら、やっぱり怖いんじゃないかな? 怪異に慣れっこのおれたちのほうが、きっと鈍くなってるんですよ」  師匠は年季が入っているから余計だろう、と。  晴道は、弟子の言葉に思わず苦笑した。 「まあ……そう言われてしまえば、否定はできんが」  言いつつ、晴道は次なる問いを投げてきた。 「それじゃあ、もうひとつ。今、横切った者を見ただろう? 村人が言っていた特徴と比べてどうだった?」  これに、玉瀬はちょっと黙った。今し方の記憶を手繰(たぐ)る。
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