鬼子(一)

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鬼子(一)

「もう十年ほど前になりましょう。ある日、村の男が、余所(よそ)から女を伴い、帰ってきました。聞けば夫婦になりたいと言うじゃありませんか」  女は、人間離れした美貌の持ち主だった。道端で難儀していたところを、男が助けて縁ができたのだとか。 「男も、涼やかな見目で優しい性質(たち)だったもんで、周りが(うらや)む二人でした。けども、素性の分からん女です。里のことを聞いても詳しくは語らない。だから、簡単には村へ受け入れられんかった」  だが、男も諦めない。そこで、しばし様子をみることになった。村人の目にかなえば、村の一員として認めると。 「彼女は働き者でしたよ。器用じゃないが、一生懸命でね。疑りの目を向ける村人にも、朗らかに接しとりました。結局、皆が認めたのは二年も経ってからでしたが」  それからの二人は、一層仕事に精を出し、絶えず笑顔の日々を送っていた。加えて、ちょうど彼女が来た頃から豊作が続き、村自体も明るい様子だったとか。  やがて、息子も生まれて賑やかになった。
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