9人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
鬼子(一)
「もう十年ほど前になりましょう。ある日、村の男が、余所から女を伴い、帰ってきました。聞けば夫婦になりたいと言うじゃありませんか」
女は、人間離れした美貌の持ち主だった。道端で難儀していたところを、男が助けて縁ができたのだとか。
「男も、涼やかな見目で優しい性質だったもんで、周りが羨む二人でした。けども、素性の分からん女です。里のことを聞いても詳しくは語らない。だから、簡単には村へ受け入れられんかった」
だが、男も諦めない。そこで、しばし様子をみることになった。村人の目にかなえば、村の一員として認めると。
「彼女は働き者でしたよ。器用じゃないが、一生懸命でね。疑りの目を向ける村人にも、朗らかに接しとりました。結局、皆が認めたのは二年も経ってからでしたが」
それからの二人は、一層仕事に精を出し、絶えず笑顔の日々を送っていた。加えて、ちょうど彼女が来た頃から豊作が続き、村自体も明るい様子だったとか。
やがて、息子も生まれて賑やかになった。
最初のコメントを投稿しよう!