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鬼子(二)
「ところが、一年と少し前のことです。竜巻が村を襲いました」
件の夫婦を含め、巻き込まれた数人が命を落とす惨事だった。一人息子は、突然、孤児になってしまったのだ。
「もちろん、村で育ててゆくつもりでしたとも。でも、それは、ただの幼子だったらの話です。あの子は違った」
父母を恋しがり、幼子は凄まじい勢いで泣き続けたという。
すると、どうしたことか。子どもの周りの草木が萎れていく。そして、あっという間に枯れてしまったではないか。
「宥めようと寄り添っていた村人も、具合が悪くなって。それで、あれは人外の者だと見当づけたんです」
恐らく、美しかった母が人ではなかったのだろう。子どもはその血を継いでいる。幼くして、これほどの不可思議を引き起こすのだ。成長すれば、後々村の脅威になりかねない。
「我々の手には負えんと判断して、村から追い出しました。あの子を不憫には思います。ただ……村のためには、仕方なかった」
最後にそう括って、長老は肩を落とした。
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