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鬼子(三)
村人たちを前に、玉瀬は複雑な思いを抱く。
長老の言うことは分かる。だが、どうにも収まらない気持ちもあった。だから、控えめな調子で呟いた。
「……仕方なかったは、言い訳の常套句ですよ」
村人からすれば、責め立てられた心地がしたのだろう。むっと顔を顰めた者が幾人もいた。
それでも、この師弟に放り出されては、また不安な暮らしに逆戻りだ。従って、長老がおずおずと確かめてくる。
「我々の依頼は、どうなるんでしょうか」
これに、晴道があっさり答えた。
「一度引き受けた仕事を、投げ出す勝手はしませんよ」
言われて胸を撫で下ろした村人たちに、晴道は思い出したように尋ねる。
「そういえば、幼子の名は、なんと言うんですか?」
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