鬼子との対峙(三)

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鬼子との対峙(三)

「そらっ、やっと捕まえた!」  やがて玉瀬は明るい声を上げた。何も知らぬ人からは、追いかけっこでもしているように見えただろう。  隙を見て後ろから捕らえたため、羽交い締めの格好ではあるものの、なるべく怖がらせないように努めている。 「大丈夫……大丈夫」  そう繰り返してみるが、子どもは依然として威嚇を止めない。その実、小さな体は、可哀想なくらい震えていた。  玉瀬はどうにも居たたまれなくなる。気づけば、噛みつかれるのを覚悟で、その身を包み込むように抱きしめていた。案の定、幼子は目一杯口を開けてくる。  が、次の瞬間、その口に収まったのは、大きな握り飯だった。 「どうだ、美味いか? そいつの腕はくれてやれんが、握り飯ならまだあるぞ」 「師匠! いつの間に起きてたんですか」  目を丸くした玉瀬に、晴道は苦笑する。
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