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鬼子との対峙(四)
「あんなに暴れられちゃあな。それより、お前はこんなことがある度に、腕やら足やら差し出すつもりか? 俺がいなけりゃ、片腕を喰われていたかもしれんぞ」
「……すみません」
叱責はもっともで、玉瀬は素直に謝った。
息をついた晴道が、幼子に視線を向ける。そして、脱力したように笑んだ。
「よっぽど腹が減ってたんだな」
鬼子と言われた小さな葛は、口に突っ込まれた物を早くも食べ終え、おかわりの入った包みに熱い視線を送っていた。
もう暴れる心配はないだろうと、玉瀬は子どもを離してやった。三人で腰を下ろし、食事の一時を楽しむ。
葛は言葉を話さなかった。それでも、食べ終える頃には、頷いたり首を振ったりと、僅かな反応を見せるようになっていた。
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