鬼子との対峙(五)

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鬼子との対峙(五)

 たらふく食べた葛は、今、その場に横たわっている。  幼子の頭を撫でながら、玉瀬の心は沈んでいた。 「この子はただ、悲しいことを嘆いただけなのに。無理やり追い出すんじゃなく、もっと他にやりようはなかったんでしょうか」  すると、晴道が淡々と告げてきた。 「お前、自分で言ってただろう? 怪異に慣れた俺たちとは違うんだ。泣いて草木を枯らしたのが、力の制御が未熟なためだとしても。村人に怪我を負わせたのが、身を守ろうとしただけであってもだ。彼らにとって、そんな力をもつ葛は恐怖の対象でしかない」  一方に肩入れしすぎると、物事は歪んで見える――だから、気をつけろと(さと)される。  彼ほど割り切れぬ自分は、やはり未熟だ。  師の言葉を受けて、玉瀬は、そう痛感するのであった。
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