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村への報告(二)
「詰まるところ、この子に村が脅かされなければ良いわけですよね? ならば、命を取らずとも解決できます」
「どうなさるのか?」
「私はちょうど、葛の仲間が暮らす里を知っているのでね。そちらに託そうと思います」
「里? 一体どんな……結局、その子や、母親の正体は何だというんです?」
「化け狐ですよ」
生き物には、それぞれ特有の気配がある。晴道は化け狐に会ったことがあるらしく、その特徴をすぐに見抜けたわけだ。
事もなげに言われて、村人は面食らった。晴道は構わずつけ加える。
「昔から、狐は豊穣をもたらすと言われます。確か、葛の母親が来てから豊作が続いたんでしたか。もしかすると、彼女が恵みをもたらしたのかもしれませんね」
瞬間、村人たちが息を呑んだ。
化け物から神の化身へ――認識を改めた目が、一斉に葛を見つめる。
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