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村からの依頼(二)
「変わった見目もさることながら、大の男を片腕で倒す力と狂暴な性をもってるんです。人間の子どもじゃあないでしょう?」
だから、村では鬼子と呼んでいるのだ。
村人たちの言葉を聞いて、晴道はちょっと目を瞬いた。あごに手を当て、すぐに言葉を発しない。そんな師に代わって、玉瀬が問いを重ねた。
「その鬼子が現れ始めたのは、いつ頃からでしょうか?」
答えたのは長老だ。
「一年ほど前からです。それも、決まって夜に」
すると、ここで物思いから戻ってきた晴道が尋ねた。
「初めて出くわした時の状況は?」
「恥ずかしながら、我々は恐ろしさに腰を抜かしてしまって。けども、鬼子のほうも、こちらを警戒してたんでしょう。我々の姿を見るや逃げていきました」
「なるほど。では、その時、鬼子は手ぶらで退散したと?」
「ええ、そのとおりで。ちょうど、奴が暗い中、畑の作物に手を伸ばしたところに行き合ったもんで」
だが、時を経て、鬼子は人間に慣れたのだろうか。今では微塵も臆さずに、邪魔とみなせば攻撃をしてくるようになった。
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