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鬼子捜し(一)
「……さて、と。期待されて出てきたわけだが。玉瀬、お前ならまず、どこに向かう?」
歩きながら晴道が尋ねてくる。
彼は時折、弟子の勘を磨くため、こうして問いをかけることがあった。
「うーん、あの山……でしょうか」
玉瀬が指差した山は、ここからほど近い場所にある。小さいながら木々の葉が広く生い茂っており、紅葉し始めた今の時期でも、鬱蒼とした雰囲気だった。
「ここらでは、一番身を潜めやすいでしょうし。それに、微かですけど、気配を感じます」
人でも獣でもない、何かの気配を。
聞いて、師は口の端を上げた。
「よし。じゃあ、確かめに行くぞ」
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